2022年04月12日

さいわい

(ゆめ工房だより より転載)


 先月プラネタリウムに「銀河鉄道の夜」を観に行ってきました。
こちらはデジタルペインティングの先駆者KAGAYA氏が全編CGで描いたプラネタリウム用の作品です。
宮澤賢治の名作を大胆に再構築した脚本と3年の歳月をかけて作り込まれた精緻な映像が観る者を圧倒します。
観客は時に鳥になり、時に乗客の視点で夜の銀河を旅します。
2006年の初上映以来、国内130ヶ所以上で上映され、観客動員数も100万人を超える大ヒットとなりました。
私も初見の時はその流れるような映像美に心を鷲掴みにされました。
今回、観客は運よく私たちだけでしたので、ドーム型の天井に映し出される透明感溢れる映像と清らかな音楽に身を任せ、
作品世界を堪能しました。

さて、原作の「銀河鉄道の夜」には印象的な一文があります。 

「誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸(さいわい)なんだねえ」
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう」。 

今世界では、「さいわい」からは程遠い事態が起きています。
2月、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まりました。
北京冬季オリンピックが終わり、パラリンピックを一週間後に控えたタイミングでの愚行でした。
元々パラリンピックは、第二次大戦で障害を負った兵士の、リハビリを目的とした競技大会から発展したものだそうです。
人が障害を負う最大の要因は戦争です。平和の祭典期間中に他国へ侵攻するなど、悪夢としか言えません。
人口4575万人のウクライナには、270万人の障害のある方々が暮らしているそうです。そしてその数は増え続けるでしょう。
 戦争は「一方の正義」の名の下に始まることが常ですが、それにより「さいわい」を感じる人はいません。
ジョバンニと共に銀河列車に乗りこんだカンパネルラは、級友を助けるために川に飛び込みます。
そして命を落とした後も、それがいいことで、さいわいだったのかと自問します。

今ウクライナでは、ロシアによる理不尽な破壊行為が国土を焦がし人々の尊厳を踏みにじっています。
自分の家族を守るために相手国の兵士を殺めなければならない矛盾に直面している人々もいるでしょう。

この便りが発行される頃には、情勢も変化し、ある種の決着がついているかもしれません。
その結果がウクライナの人々にとってどういう意味を持つのかは分かりません。
それでもあの国の子どもたちの未来のために、一日も早い軍事侵攻の停止を願います。
そしてウクライナの人々に心安らかな日々が戻ることを祈っています。
 
2022年度、ゆめ工房は利用者さん24名、職員9名でスタートをします。 
今年度もよろしくお願い致します。
                                    施設長 佐々木 志穂
posted by machidayumekoubou at 17:58| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする