2022年10月07日

間口

 6月、上野の森美術館で開催された「木梨憲武展 Timing −瞬間の光り−」を観に行きました。
会場に足を踏み入れた途端、絵画、オブジェ、ペインティング、工作、粘土など
多彩な作品が放つエネルギーに圧倒され、心を鷲掴みにされました。
累計来場者数が120万人を超えたというのも頷けます。
アートは時に、作家の喪失感や鬱屈した想いなどが昇華され作品となりますが、
木梨作品の根底には周囲への感謝と人生への肯定があるように感じました。
200余点の作品の中で、並ならぬ熱量を受けたのが「REACH OUT」シリーズです。
その中の一つに無数の手のひら≠ェ円を成す直径160pの作品がありました。
黒のマジック1色で埋め尽くすように描かれた大小の様々な手のひらは、
まるでうごめく生き物のようであり、曼荼羅のようでもあり圧巻の一言でした。
木梨さんの、好きなことに没頭する集中力と、わが道を行く自由な発想は、
ゆめ工房の人たちのそれとおそらく同質のものです。
木梨さんや彼らの作品には力みがなく、観る者に緊張を与えません。
そして本来アートというのは、誰もが気軽に楽しめる間口の広いものなのだと思います。
還暦を過ぎてますます身軽になった感のある木梨さん。
いつか、ゆめ工房の曼荼羅師ユータさんとの創作コラボが実現したら…面白いですね。


 さて、この夏、理事長から絵手紙が届きました。
美味しそうな西瓜に添えられた文に、直接的な表現はありませんでしたが、
理事長の想いがしみじみ伝わり嬉しかったです。
また、賛助会員さんからも折に触れ押し花を添えた手紙やゆめ工房便りの感想を頂きます。
一方通行ではないやりとりに毎回励まされています。
ゆめ工房宛に届いた手紙の数々を読み返すと、
ゆめ工房が皆様と積み重ねてきた関係のありようが伺えます。

ボランティアや賛助会員を終えることを、わざわざご連絡をくださるのも、
ゆめ工房ならではの関係性のありようだと思います。
これまで築いてきた関係に区切りをつける「終わりの美」の大切さを、
私は皆様から学びました。

いつもありがとうございます。

この会報を読んでくださっている皆様とのご縁が、ゆめ工房の財産です。

皆様にとって、実り多き秋となるよう、どうぞ健やかにお過ごしください。 
 
                    施設長 佐々木志穂

               ゆめ工房だより10月号より転載
posted by machidayumekoubou at 11:44| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする