2023年01月14日

ゆめ工房だより からの転載

< 賛 歌 >
 
「ジグザグ讃歌 」 

子どもの発達も
人生の軌跡も
登っては下り 進んでは戻る
病んでは癒え 泣いては笑う
しばし停滞、急な飛躍
ジグザグあればこそ
子どもは鍛えられ
人の心は豊かとなる
人類の進歩も
社会の歴史も
そのジグザグの
紆余さらに長遠
曲折はるか複雑
幾百千万 生命かさねて
開く道 子孫に託し
人類は未踏の道を行く
ジグザグ道よ 私を
私たちを 鍛えておくれ 


この詩の作者は元日本福祉大学教授の近藤薫樹さんです。
昨秋、この詩を幼なじみの美希ちゃんから教わりました。
彼女は学生時代、滋賀県にある近江学園という障害の重い人たちの暮らす施設で住み込みバイトをしていました。
「着ていたジャージを(入所者に)ビリビリにされちゃってさー。もぉ、目が点よ。」と
屈託なく笑う彼女に、当時20代だった私は(大変そうだけど面白そうな世界だな)と思ったものです。
あの頃の彼女の口ぐせは「(障がいのある)メンバーにとって、(その判断は)どうなのか?」でした。
この仕事への向き合い方のベースを、彼女から教わった気がします。

あれから四半世紀。

近江学園が「この子らを世の光に」という言葉を残した糸賀一雄氏の創設した知的障害児の入所施設だったことに気がついたのは、
この詩を教わってからです。

下りても戻っても病んでも泣いても、しばしの停滞さえも讃歌ととらえる人生観…。
ジグザグ讃歌を読んだ時、胸が震えました。
これまで、困難は自分を高めるチャンスと捉えていました。
けれど人生の折り返し地点に立つ私にこの詩は
「そう勢いに任せて動きなさんな。少し歩みを緩めなさい」と言ってくれたような気がします。


2023年が始まりました。
今年もwithコロナを模索しながら、前進と後退、しばし停滞を繰り返すのでしょうか。
「会社の寿命30年説」を意識するなら、ゆめ工房は新しいステージに移ります。

この詩の大らかな視座にならい、どっしり構えてコロナ後の世界を待つことにします。

新しい年が皆様にとって、大切な方と共に、泣いては笑う一年となりますように。

本年もよろしくお願い致します。

施設長 佐々木志穂

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2022年11月04日

佐々木極さんの写真展が終了しました。

 10月に開催した写真展の佐々木極さんから、メッセージが届きました。



極さん所感画像.jpg
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2022年10月07日

間口

 6月、上野の森美術館で開催された「木梨憲武展 Timing −瞬間の光り−」を観に行きました。
会場に足を踏み入れた途端、絵画、オブジェ、ペインティング、工作、粘土など
多彩な作品が放つエネルギーに圧倒され、心を鷲掴みにされました。
累計来場者数が120万人を超えたというのも頷けます。
アートは時に、作家の喪失感や鬱屈した想いなどが昇華され作品となりますが、
木梨作品の根底には周囲への感謝と人生への肯定があるように感じました。
200余点の作品の中で、並ならぬ熱量を受けたのが「REACH OUT」シリーズです。
その中の一つに無数の手のひら≠ェ円を成す直径160pの作品がありました。
黒のマジック1色で埋め尽くすように描かれた大小の様々な手のひらは、
まるでうごめく生き物のようであり、曼荼羅のようでもあり圧巻の一言でした。
木梨さんの、好きなことに没頭する集中力と、わが道を行く自由な発想は、
ゆめ工房の人たちのそれとおそらく同質のものです。
木梨さんや彼らの作品には力みがなく、観る者に緊張を与えません。
そして本来アートというのは、誰もが気軽に楽しめる間口の広いものなのだと思います。
還暦を過ぎてますます身軽になった感のある木梨さん。
いつか、ゆめ工房の曼荼羅師ユータさんとの創作コラボが実現したら…面白いですね。


 さて、この夏、理事長から絵手紙が届きました。
美味しそうな西瓜に添えられた文に、直接的な表現はありませんでしたが、
理事長の想いがしみじみ伝わり嬉しかったです。
また、賛助会員さんからも折に触れ押し花を添えた手紙やゆめ工房便りの感想を頂きます。
一方通行ではないやりとりに毎回励まされています。
ゆめ工房宛に届いた手紙の数々を読み返すと、
ゆめ工房が皆様と積み重ねてきた関係のありようが伺えます。

ボランティアや賛助会員を終えることを、わざわざご連絡をくださるのも、
ゆめ工房ならではの関係性のありようだと思います。
これまで築いてきた関係に区切りをつける「終わりの美」の大切さを、
私は皆様から学びました。

いつもありがとうございます。

この会報を読んでくださっている皆様とのご縁が、ゆめ工房の財産です。

皆様にとって、実り多き秋となるよう、どうぞ健やかにお過ごしください。 
 
                    施設長 佐々木志穂

               ゆめ工房だより10月号より転載
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2022年09月15日

佐々木極さんの「30周年記念写真展」を開催します。

 ゆめ工房の30周年イヤーを記念して、
佐々木極さんによる写真展を開催します。
皆さまのご来場をお待ちしております。


会 期 2022年10月3日(月)〜10月31日(月)
時 間 10:00〜16:00
場 所 町田ゆめ工房ギャラリー
駐車場 あり



 佐々木さんからご寄稿いただきました。


< “町田ゆめ工房開所30周年記念” に寄せて >

 町田ゆめ工房開所 30 周年おめでとうございます。
心からお慶び申し上げます。

 1992年4月に「つぼみの会 福祉作業所ゆめ工房」として設立されました。
以来 30 年、「一本の木にたくさんのゆめという花が咲きますように」を願いに、
「働きながら自分らしく、このまちの中で、このまちの人たちと 自然に暮らしていくこと」を事業コンセプトに、
相原、多摩地区の福祉に多大な貢献をしてこられました。
ここに敬意と感謝を申し上げます。

 さて5年程前、朝の連ドラ『ひよっこ』で素敵な公園が映りました。エンドクレジットには「相模原公園」と。
さっそくこの公園を訪れました。大きなメタセコイア並木に囲まれたフランス式庭園、季節の花が美しい「噴水広場」、
大きな温室があり外国の見知らぬ美しい花々が。その中にはシアターもありました…。さらに二階にはギャラリーが。
― うん!ここで写真展をしてみたい!
こうして2019年の暮れ、「県立相模原公園グリーンギャラリー」で、個展 『インプレッションズ-心ゆたかに-(全43点展
示)』を開きました。
相原の皆さん、近くの幼稚園の先生と園児の皆さん、著名写真家の元編集者からは「頑張りなさい」と激励を。
画家には海の作品を「油絵で描きおこしたい」と頼まれ、イラストレーターは「海に出かけてみたくなった」と・・・。
いろいろな方々に覧て頂き感激でした。小学生のお子さんからは、作品『スイーツアラカルト2』を覧て、「なんかいもきて
ます。きれいでほんものみたいで、たべたくなりました。」と感想を貰いました。お礼にとクリスマスの写真を差し上げまし
た。お母さんからもお便りを頂きました。スイーツは暖かい交流をもたらしてくれたのでした。

― 写真展にはこうした様々な人達との会話と交流がありました。
そしてゆめ工房の施設長さん、前施設長ご夫妻にもご覧頂きました。
「一枚一枚の写真が詩的でした。何気ない風景を大胆な構図で切り取る、その感性と対象物へのやわらかいまなざしが
どの作品からも伝わってきました。人柄のにじみ出た写真展でした。ぜひ次回は人物にレンズを向け、対話をしてくださ
い。今日は心が洗われました。静かで暖かなひと時をありがとうございました。」と感想ノートに寄せて頂きました。
また後日、その一部の作品を、ゆめ工房さんで展示してくださいました。
こうしたご縁で、春に施設長さんから「30周年迎えるので、写真展をしませんか?」とお声をかけて頂きました。
― とても光栄に思いました。

訪問した際には、利用者さんからも「こんにちは」と自然な挨拶を頂き、中庭で撮影していた時には窓越しに、職員さん
と利用者さんから笑顔の目礼を頂きました。
入口ホールには利用者さんそれぞれが個性豊かに表現されたイラスト、絵やクラフトがあり、素晴らしく思いました。
さて、開催を予定しております「ゆめ工房30周年記念写真展」ですが、
ゆめ工房、相原、生まれた伊豆や旅先での風景、季節の花など撮りためた写真の中から選んだ作品たちを展示します。
― “心ゆたかなひととき”に繋がればいいなと思っております。
Anniversary yearを迎えた”ゆめの工房“へお越し下さい。
― この次には利用者さんたちのイラストや絵画作品たちと一緒に出来たらいいなと思っております。
末筆になりましたが、町田ゆめ工房のますますのご発展をお祈りするとともに、職員の皆様、利用者の皆様、ご家族の
皆様、地域の皆様のご健勝をお祈り申し上げます。
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2022年07月22日

嬉しいお客さま

 昨日、突然の電話がありました。
「リキュールケーキは、ありますか?」とのこと。
「種類は少ないですけどありますよ」とお答えしたところ、
「1時間後くらいに行きます」とのこと。
若い男性からの問い合わせでした。

夕方、男性がお二人で来訪されました。
まだ学生さんとのこと。

なんでも、お母さんのお誕生日に差し上げるそうです。
洋酒の入ったフルーツケーキを探していて、
「リキュールケーキ 町田」でネット検索したところ、
ゆめ工房のホームページにヒットしたそうです。

今まで来訪されたことのない年齢層のお客さまで、
なんとも嬉しかったです。

お二人には、薬師池公園の直売所でも販売していること、
直売所には週に一度、納品していること、
お取り置きもできることをお伝えしました。

爽やかな好青年達に、すっかり心が洗われた出来事でした。




posted by machidayumekoubou at 16:44| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月15日

休所のお知らせ

 今週は梅雨の戻りだったのでしょうか?

ムワっした日が続きましたね。


 さて、ゆめ工房は7月19日(火)、休所致します。

良い連休をお過ごしください。


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2022年04月12日

さいわい

(ゆめ工房だより より転載)


 先月プラネタリウムに「銀河鉄道の夜」を観に行ってきました。
こちらはデジタルペインティングの先駆者KAGAYA氏が全編CGで描いたプラネタリウム用の作品です。
宮澤賢治の名作を大胆に再構築した脚本と3年の歳月をかけて作り込まれた精緻な映像が観る者を圧倒します。
観客は時に鳥になり、時に乗客の視点で夜の銀河を旅します。
2006年の初上映以来、国内130ヶ所以上で上映され、観客動員数も100万人を超える大ヒットとなりました。
私も初見の時はその流れるような映像美に心を鷲掴みにされました。
今回、観客は運よく私たちだけでしたので、ドーム型の天井に映し出される透明感溢れる映像と清らかな音楽に身を任せ、
作品世界を堪能しました。

さて、原作の「銀河鉄道の夜」には印象的な一文があります。 

「誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸(さいわい)なんだねえ」
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう」。 

今世界では、「さいわい」からは程遠い事態が起きています。
2月、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まりました。
北京冬季オリンピックが終わり、パラリンピックを一週間後に控えたタイミングでの愚行でした。
元々パラリンピックは、第二次大戦で障害を負った兵士の、リハビリを目的とした競技大会から発展したものだそうです。
人が障害を負う最大の要因は戦争です。平和の祭典期間中に他国へ侵攻するなど、悪夢としか言えません。
人口4575万人のウクライナには、270万人の障害のある方々が暮らしているそうです。そしてその数は増え続けるでしょう。
 戦争は「一方の正義」の名の下に始まることが常ですが、それにより「さいわい」を感じる人はいません。
ジョバンニと共に銀河列車に乗りこんだカンパネルラは、級友を助けるために川に飛び込みます。
そして命を落とした後も、それがいいことで、さいわいだったのかと自問します。

今ウクライナでは、ロシアによる理不尽な破壊行為が国土を焦がし人々の尊厳を踏みにじっています。
自分の家族を守るために相手国の兵士を殺めなければならない矛盾に直面している人々もいるでしょう。

この便りが発行される頃には、情勢も変化し、ある種の決着がついているかもしれません。
その結果がウクライナの人々にとってどういう意味を持つのかは分かりません。
それでもあの国の子どもたちの未来のために、一日も早い軍事侵攻の停止を願います。
そしてウクライナの人々に心安らかな日々が戻ることを祈っています。
 
2022年度、ゆめ工房は利用者さん24名、職員9名でスタートをします。 
今年度もよろしくお願い致します。
                                    施設長 佐々木 志穂
posted by machidayumekoubou at 17:58| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月21日

休業のお知らせ

 2月20日、町田ゆめ工房で新型コロナウィルスの陽性者が1名出ました。

これにより、ゆめ工房は2月25日(金)まで休業致します。

今後の再開については、改めてご報告致します。

posted by machidayumekoubou at 16:36| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月01日

嬉しい電話

 昨晩から大雨でした。今も少しだけ雨が残っています。

今朝はラジオから、「神田川」が流れていました。
今日から12月。
早いものですね。

 さて、昨日嬉しいお電話をいただきました。
7月に見学にいらした方からです。
ボランティアを始めたいということで
今週いらっしゃいます。
 7月にいらしたときのことをよく覚えておられ、
「帰りの会」に飛び入り参加をし、
一緒にお茶を飲んだことなどを語ってくださいました。

ご縁というのは不思議なものです。

コロナ渦であっても出会いがあることに感謝です。
posted by machidayumekoubou at 08:14| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月08日

ニヤリ・ホット

 何かと話題にこと欠かなかった東京2020オリンピックが、
すったもんだの末、閉幕しました。
やれ、史上最多のメダル獲得だの、阿部兄妹の同日金メダル獲得だの、
女子ソフトボールの13年ぶり連覇などありましたが、
わたくしとしては、柔道男子100s級のウルフ・アロン選手の
記者会見での自己紹介で「タカアンドトシ」の「タカに似てるって
言われます」みたいな発言に笑いました。
皆さんは何か心に残りましたか?

 そんなわけで今回は「ニヤリ・ホット」です。
ハインリッヒの法則「ヒヤリ・ハット」はインシデントに関する事柄ですが、
日常の思わず「ニヤリ」だったり、心がポカポカする
「ホット」な場面を指します。



 ある日の掃除時間中
〇〇さんがコードレスクリーナーで床面を掃除中です。
何かいつもと音が違います。
近づいて見てみると吸入口が、天井を向いているではありませんか。
「〇〇さん、それじゃあゴミは吸い取れないよ」
吸入口を床面に向け再スタート。
吸わない掃除機を懸命に前後に動かす姿がユーモラスでもあり、
健気です。思わず「にやり」。


 送迎車内での利用者さん同士の会話
△△さん:「あー、あれだよ、あれ。中丸君がやってんじゃん。ボイスレコーダー」
職員M:(いやいや記録じゃないし・・・)(心のつぶやき)
 こともあろうか
□□さん:「うん、そうだよね」
職員M:(ちょ、待てよ)(キムタク主演ドラマのワンシーンがプレイバック あくまでも心のつぶやき)
 
 この会話が何がきっかけで始まり、どう終焉したのか全く覚えていませんが、
一連のやりとりだけは昨日のことのように思い出されます。
運転中ですので、後ろをふりかえることもかなわず、ツッコミも入れられず、
ハンドルを握りながら一人悶々としておりました。

 わたくしと言えば、(うーん、でもまぁ、実害ないしホットくか)ということで
スルーを決め込みました。
以上「ホット」するエピソードでした。
ありゃ、「ホット」違いでしたね。あしからず。
                                       職員M
   
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2021年07月26日

今日のお客さま

 今朝、地域にお住いのМさんからお電話がありました。
暑くなる前にいらっしゃるとのこと。
コロナでおよそ1年半ぶりのお越しです。

Mさんはゆめ工房ができて間もない頃からのボランティアさんです。
かれこれ30年近いお付き合いになります。

電話を切って30分ほどでMさんがいらっしゃいました。
日傘に帽子にリュックサックといういでたちです。

なんと御年80歳!
すっと背筋が伸び、お声にも張りがあったため、
実際の年齢よりもずっと若く見えました。

今日はわざわざごみ処理券と有料ごみ袋とリキュールケーキを
購入してくださいました。

コロナの自粛期間をどのように過ごされていたのかをお聞きしたところ、
日頃できない写真の整理などを行っていたとのこと。

また、趣味のサークル活動が軒並み中止になり、出歩くことは少なかったそうですが、
毎日のルーティンをこなすことで気分の落ち込みを防いでいたそうです。


特に印象的だったのは、毎朝トイレに設置した三面鏡に向かって
立ち姿をチェックし、鏡に向かって笑顔を作っていたという話です。
そして鏡の中の自分を奮い立たせる言葉を自分にプレゼントしているそうです。


そのほかのも80歳になったとき、自分が今できることを紙に書き出してみたそうです。

ほんの些細なことであっても、これもできる、あれもできると書き出していくことで、
自信につながったそうです。

Mさんのゆめ工房での滞在時間は30分ほどでしたが、毎日続けている健康体操の話もお聞きでき、
色々と勉強になりました。

やはり年齢を上手に重ねるコツは、自分を肯定すること、何にでも好奇心を持つことなのかもしれません。

Mさん、お暑い中、会いに来てくださり、ありがとうございました。
posted by machidayumekoubou at 19:56| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月10日

ゆめ工房だより6月号

今月発行した「ゆめ工房だより」を転載します。

 < ラスト ソング >

「想像ラジオ」(いとうせいこう著 河出書房新社刊)を読みました。
刊行当時、東日本大震災を背景に、生者と死者の新たな関係を描き出した≠ニ話題になった本です。
物語の主人公は「想像ラジオ」のDJアーク。彼が「想像」という電波を使い人々に番組を届けるという話です。
冒頭、海沿いの町を見下ろす杉の樹上から彼の軽快な声が聴こえてきます。リスナーからのメールを読み上げその内容に沿う曲を流すのです。彼は陽気によく喋るのですが、徐々に彼の身辺で起きたことが明らかになり、「軽快さ」が痛みを帯びてきます。
(この人はいつまで木の上から放送を続けるのだろう?)と怪訝に思ったところで気づきました。そうか、彼をここまで押し上げたのは、津波だったのか…と。寒空の下、重機の届かない高さに仰向けで引っかかる彼の姿が浮かびました。彼自身、自分の状況を把握しておらず、リスナーとのやり取りで少しずつ事実を受け入れていきます。気がかりなのは妻子の安否です。

小説では、登場人物の言葉を借りて「悲しみは共振できる」ことが繰り返し述べられています。 

 < 亡くなった人が無言であの世に行ったと思うなよ > 

 <アークさん、物わかりよくあの世に行く必要なんてないんです > 
 
 < 亡くなった人の悔しさや恐ろしさや心残りやらに耳を傾けようとしないならば、
   ウチらの行動はうすっぺらいもんになってしまうんじゃないか > 

物語の最後、最愛の家族の声を聴くことができたアークはリスナーに語りかけます。

想像しよう。聴きたい声を聴こう。僕だっていつでも戻ってくる。
語りかけるし、話を聴く。その声に必ず耳を澄まして欲しい、リスナーたちよ。

そして、番組の最後にアークが選んだ曲は「リデンプション・ソング」(救いの歌)でした。

ボブ・マーリーのラストアルバムの一番最後に収められた曲です。   

♪ 一緒に歌ってくれないか /  この自由の歌を  /  だって俺にあるのはこれだけ /  救いの歌だけ



 今年3月、ゆめ工房の元ボランティアさんで、法人監事でもあった方がお亡くなりになりました。
昨年の春、お会いした時にはお元気でしたので、いまだに信じられません。
多くの花に囲まれた遺影は、見覚えのある柔らかい満面の笑顔でした。
ご自宅の写真立てには、長崎の夜景をバックにしてご家族と笑う姿がありました。
その写真を眺めながら、あぁ、この方は私たちにも、ご家族と同じ笑顔で接してくれていたのだな、
と思ったら、鼻の奥にツンとした痛みが走りました。
  
ご冥福を心よりお祈り致します。
                                             施設長 佐々木志穂
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2021年05月05日

通信欄

 3月の末に「ゆめ工房だより」を発送しました。
4月以降、賛助会費の振り込み通知が連日のように郵送され
手元に届いています。
今年度の振込用紙を見ながら領収証の発行を行っているのですが、
今年度は昨年度よりも、というよりはこれまでのどの年度よりも
通信欄へメッセージを書き込んでくださる方が多いことに
気が付きました。

中には、面識のない方もおられるのですが、そんな方々の
励ましや気遣いの一言に、何度も頭の垂れる思いをいたしました。

力強い筆致に励まされたこともあります。

特に男性からの記述が増えていることを実感しています。

どうしても内省的、詩的、情緒的になってしまうこちらからの
発信に対して、背中を大きな手で叩かれたような
安心を覚えました。

そして、20年以上、欠かさず振り込みを続けてくださる方々もおられます。
退職した施設長との関係で振り込みをしてくださっていた方々が、
その後も変わらずにご支援をしてくださっています。

そんな無名の方々の善意に見守られて2021年度もスタートから1カ月が
経ちました。

今日は連休の最終日。
玄関前の花に水やりをしようと出勤したら、
すでに土が湿っていました。
ご近所のボランティアさんです。

本当に、感謝の念しかありません。



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2021年04月29日

関係性

 1992年に設立したゆめ工房。
2022年は節目の年です。

 今、30周年に向けて、記念事業を企画しています。
その一つが「写真」。
普段の活動の様子を写真で紹介するというものです。
どんなに言葉を並べても、一枚の写真にはかないません。
どんなに耳触りの良い言葉で施設を説明しても、
五感を通した表現にはかないません。

フィルムからデータに変わり、毎回、惜しげもなくシャッターを
切ることができるようになりました。

被写体は利用者の皆さんです。
けれど、何を撮るのがいいのか、思案中です。

仕事の風景。昼休みの風景。仕事場。彼らのまなざし。彼らの指先。
彼らの足先。彼らの背中。彼らの口元。
撮りたいものはたくさんあります。

そんな中で、職員だからこそ撮れるものは何か、考えてみました。

それは、「関係性」です。
利用者さんと職員。利用者さんとボランティアさん。
利用者さんと作業道具。利用者さんと作業室。
利用者さんと利用者さん。
利用者さんと商品。

そんな関係性を写真に落とし込めたら、
観る人の胸に何かを残せるような気がします。

プロのカメラマンをしのぐもの、それは利用者さんとの
信頼関係です。
そんな関係性をお届けできたらと考えています。

posted by machidayumekoubou at 23:24| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月09日

嬉しい電話

 昨日、相原の町会長さんからお電話をいただきました。
初めて言葉を交わす方です。
その前の日にお配りしたケーキのお礼でした。
相原には11の町会があるのですが、
「ゆめ工房だより」はそのすべての町会で回覧されています。
その回覧の手配をしてくださっていたのが町会長さんたちです。
一年のお礼でケーキを差し上げたことに対して
わざわざ、お電話をかけてきてくださったのです。

 なんでも、退職を機に地域活動の一環として町会の仕事を
お引き受けになったとそうです。
思い起こせば10年ほど前、当時の町会長さんが会長になったのを機に
ゆめ工房に関心を寄せてくださり、来訪されたことがありました。
そしてその時撮った写真を、町会内で発行する機関誌に掲載し、
ゆめ工房を紹介してくださったことを思い出しました。

そう考えると、ゆめ工房だよりは、ゆめ工房に関心をもっていただく
大切なツールであることがわかります。

後日談として、冒頭に触れた町会長さんから本日も電話をいただきました。
ケーキが美味しかったので購入を考えているとのことでした。

ケーキや会報が媒体となり、地域とゆめ工房をつないでいます。
これからも記憶に残る商品や会報を作っていきたいと思いました。
posted by machidayumekoubou at 23:17| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月07日

納品からの散策

 毎週水曜日の午前中に長池公園の納品に行っています。
これまで納品の終わりに長池公園内を散策することが多かったのですが、
昨年の10月頃より相模原北公園に場所を移しています。
今回のコロナ禍で外出もままならないので、
少しでも自然に触れあうことでリフレッシュになればと思います。

長池公園は広く緑豊かなのですが、多少勾配があるので、
たとえば地面が濡れていたりすると転倒の怖さを感じます。
その点、北公園はほぼフラットな地形ですので、
スムーズに移動できることが挙げられます。
 また、紫陽花やバラなど、園内に様々な花が植えられており
来園者の目を楽しませてくれます。
ベストシーズンは春先から梅雨を経て初夏といった時期かと思われますので
秋口からは樹々の紅葉が見ごろとなります。
銀杏の黄色が訪れるたびにその面積が広がる様は時間の経過を感じさせてくれます。
 さて、利用者の皆さんの散策ですが、景色には目もくれず歩を進める方もおり、
さながらクロスカントリーのようでもあります。
まあ、紅葉狩りが目的ではないので、それぞれの楽しみ方でよいかと思います。
日差しがあれば絶好のお散歩日和も曇り空では寒さが身に沁みます。
posted by machidayumekoubou at 16:10| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

きらぼし銀行様での展示を終えて

 ゆめ工房の活動を地域のみなさまに知っていただきたく、
「きらぼし銀行相原支店」様のご協力のもとで始まった店内展示。

2018年から毎年展示をさせていただき、
2020年度は11月16日から12月18日まで行いました。
コロナウィルス対策で店内ではスペースを空けてお客様に対応をされていますが、
例年通りの場所で皆さまの目に留まりやすい位置で展示をさせていただき、
感謝をしております。

コロナウィルス感染拡大で大変な状況の中、支店長様をはじめご協力をくださった
相原支店の皆さま、どうもありがとうございました。
posted by machidayumekoubou at 16:01| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

販売見直しのお知らせ

 20年以上、販売を続けてきたクッキーですが、近年は売上が低迷していました。
そのため今後は、プレーンとチョコチップの2種類のみで、
イベントやギフト販売、特別のご注文に限定をさせていただきます。
ご入用の際は、30個から承りますので、お早めにご相談ください。
posted by machidayumekoubou at 15:57| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

価格改定のお知らせ

 2006年から販売を続けている「乾燥糸こんにゃく」。
このたび、パッケージのリニューアルを行いました。
クラフト素材のチャック付き保存袋になり、「垢抜けた」
「贈答に利用しやすい」と好評です。
 このたび、リニューアルに伴い、価格を見直しました。
14年間、消費税が2度上がっても価格据え置きで頑張ってまいりましたが、
利用者さんへの給料アップのため値上げをさせていただきます。
ご理解のほど、よろしくお願い致します。

☆ リニューアル後の税込み価格 ☆

 10個入り (旧)480えん ➡ (新)600えん

  5個入り (旧)250えん ➡ (新)400えん
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新年のごあいさつ

 ゆめ工房だより 1月号 より転載します。     
             
                      

< こずえ >

 2021年を迎えました。
2020年はコロナが世界を席巻し、何が正解なのか、どこがゴールなのかも見えぬ中、
生物学者の福岡伸一さんの見識がわずかながらに不安な気持ちを和らげてくれました。

「この世界では環境変化や天変地異が絶えず起こり、未体験の病原体が繰り返しやってくる。
種の中に多様性があれば、感染してしまう個体がいる一方で逃げ延びる個体もいる。
進化は決して強いものが生き残るのではなく、多様性を内包する種が生き残ってきた。」

コロナに試されているかのように、今、私たちの多様性が問われています。


 さて、昨年、タイトルに惹かれて手にした書籍があります。
「私が最近弱っているのは毎日『なんとなく』食べているからかもしれない」(文響社 小倉朋子著)。
「食べること」は人に見られる唯一の本能。
どう食べるかはその人の人生に深くかかわってくる。
グッとくる名言に感銘し、著者の主宰する「食輝塾」に入塾しました。
入塾の動機は「正しいテーブルマナーや箸の持ち方を習得したい。」
「自分の食べ方のクセを知りたい」というものでしたが、
「テーブルマナー」は単なるルールやマニュアルではなく、
根底に「相手を思いやる気持ち」があること知り、
これは、仕事にも通じる考え方だと思うようになりました。

私たちの専門職としての技術は、利用者さんに対する敬意や誠意の上にあるものです。

ただ、敬意や誠意をどのように具体化すれば良いのでしょうか。
昨年、講師を招いて行った虐待防止研修では、
「不適切なケアを見過ごす体質が虐待につながる」と教わりました。
研修で行った「不適切ケアチェック」の中に「利用者さんの前でバタバタする」
という項目があり、ドキッとしました。
音に対する気遣いが薄かったからです。

食事に限らず音を立てないことは、
物を大切に扱うことであり、相手に圧をかけない態度にもつながります。
一つひとつの所作に意識を向け、心を込めることで相手への向き合い方が変わります。

 お互いに会ったら挨拶を交わす。
親切にしてもらったらお礼を言う。
仕事や食事中は大きな音を立てない。
席を立つ時は行き先を告げるなど、これらは私たちを管理するルールではなく、
互いを思いやる具体的な行動です。
「利用者さんの主体性の尊重」と「心地よい集団作り」は対立する価値観ではありません。
多様性はにぎやかです。

けれど「静かな時間」も私たちには必要です。

 最後に、相原ゆかりの詩人、八木重吉さんの詩をご紹介します。


「けやき」

  けやきはいい
  したのほうもいいが 
  こずえが 
  ひろがって 
  空にきえるあたり 
  なんともいえず 
  しずかだ

2021年は、心しずかな一年となりますように。本年もよろしくお願いいたします。

                                 施設長 佐々木 志穂
posted by machidayumekoubou at 15:50| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする