2021年06月10日

ゆめ工房だより6月号

今月発行した「ゆめ工房だより」を転載します。

 < ラスト ソング >

「想像ラジオ」(いとうせいこう著 河出書房新社刊)を読みました。
刊行当時、東日本大震災を背景に、生者と死者の新たな関係を描き出した≠ニ話題になった本です。
物語の主人公は「想像ラジオ」のDJアーク。彼が「想像」という電波を使い人々に番組を届けるという話です。
冒頭、海沿いの町を見下ろす杉の樹上から彼の軽快な声が聴こえてきます。リスナーからのメールを読み上げその内容に沿う曲を流すのです。彼は陽気によく喋るのですが、徐々に彼の身辺で起きたことが明らかになり、「軽快さ」が痛みを帯びてきます。
(この人はいつまで木の上から放送を続けるのだろう?)と怪訝に思ったところで気づきました。そうか、彼をここまで押し上げたのは、津波だったのか…と。寒空の下、重機の届かない高さに仰向けで引っかかる彼の姿が浮かびました。彼自身、自分の状況を把握しておらず、リスナーとのやり取りで少しずつ事実を受け入れていきます。気がかりなのは妻子の安否です。

小説では、登場人物の言葉を借りて「悲しみは共振できる」ことが繰り返し述べられています。 

 < 亡くなった人が無言であの世に行ったと思うなよ > 

 <アークさん、物わかりよくあの世に行く必要なんてないんです > 
 
 < 亡くなった人の悔しさや恐ろしさや心残りやらに耳を傾けようとしないならば、
   ウチらの行動はうすっぺらいもんになってしまうんじゃないか > 

物語の最後、最愛の家族の声を聴くことができたアークはリスナーに語りかけます。

想像しよう。聴きたい声を聴こう。僕だっていつでも戻ってくる。
語りかけるし、話を聴く。その声に必ず耳を澄まして欲しい、リスナーたちよ。

そして、番組の最後にアークが選んだ曲は「リデンプション・ソング」(救いの歌)でした。

ボブ・マーリーのラストアルバムの一番最後に収められた曲です。   

♪ 一緒に歌ってくれないか /  この自由の歌を  /  だって俺にあるのはこれだけ /  救いの歌だけ



 今年3月、ゆめ工房の元ボランティアさんで、法人監事でもあった方がお亡くなりになりました。
昨年の春、お会いした時にはお元気でしたので、いまだに信じられません。
多くの花に囲まれた遺影は、見覚えのある柔らかい満面の笑顔でした。
ご自宅の写真立てには、長崎の夜景をバックにしてご家族と笑う姿がありました。
その写真を眺めながら、あぁ、この方は私たちにも、ご家族と同じ笑顔で接してくれていたのだな、
と思ったら、鼻の奥にツンとした痛みが走りました。
  
ご冥福を心よりお祈り致します。
                                             施設長 佐々木志穂
posted by machidayumekoubou at 16:33| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月05日

通信欄

 3月の末に「ゆめ工房だより」を発送しました。
4月以降、賛助会費の振り込み通知が連日のように郵送され
手元に届いています。
今年度の振込用紙を見ながら領収証の発行を行っているのですが、
今年度は昨年度よりも、というよりはこれまでのどの年度よりも
通信欄へメッセージを書き込んでくださる方が多いことに
気が付きました。

中には、面識のない方もおられるのですが、そんな方々の
励ましや気遣いの一言に、何度も頭の垂れる思いをいたしました。

力強い筆致に励まされたこともあります。

特に男性からの記述が増えていることを実感しています。

どうしても内省的、詩的、情緒的になってしまうこちらからの
発信に対して、背中を大きな手で叩かれたような
安心を覚えました。

そして、20年以上、欠かさず振り込みを続けてくださる方々もおられます。
退職した施設長との関係で振り込みをしてくださっていた方々が、
その後も変わらずにご支援をしてくださっています。

そんな無名の方々の善意に見守られて2021年度もスタートから1カ月が
経ちました。

今日は連休の最終日。
玄関前の花に水やりをしようと出勤したら、
すでに土が湿っていました。
ご近所のボランティアさんです。

本当に、感謝の念しかありません。



posted by machidayumekoubou at 10:27| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月29日

関係性

 1992年に設立したゆめ工房。
2022年は節目の年です。

 今、30周年に向けて、記念事業を企画しています。
その一つが「写真」。
普段の活動の様子を写真で紹介するというものです。
どんなに言葉を並べても、一枚の写真にはかないません。
どんなに耳触りの良い言葉で施設を説明しても、
五感を通した表現にはかないません。

フィルムからデータに変わり、毎回、惜しげもなくシャッターを
切ることができるようになりました。

被写体は利用者の皆さんです。
けれど、何を撮るのがいいのか、思案中です。

仕事の風景。昼休みの風景。仕事場。彼らのまなざし。彼らの指先。
彼らの足先。彼らの背中。彼らの口元。
撮りたいものはたくさんあります。

そんな中で、職員だからこそ撮れるものは何か、考えてみました。

それは、「関係性」です。
利用者さんと職員。利用者さんとボランティアさん。
利用者さんと作業道具。利用者さんと作業室。
利用者さんと利用者さん。
利用者さんと商品。

そんな関係性を写真に落とし込めたら、
観る人の胸に何かを残せるような気がします。

プロのカメラマンをしのぐもの、それは利用者さんとの
信頼関係です。
そんな関係性をお届けできたらと考えています。

posted by machidayumekoubou at 23:24| * Informathion | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ピースをする人、しない人

 今年度が始まって早1ヶ月。
今日からゴールデンウィークが始まりました。
緊急事態宣言が発令され、
今年度も年内は様々な活動に制限がかかるだろうと
予想しています。

そんな中、日々の活動を写真に残そうと、
意識的にカメラを手にするようになりました。
カメラを向けると利用者さん一人一人との
心の距離を測ることができます。

こちらに対してどれくらい心を開いてくれているのかが
よくわかります。

先週は、今月で対処となるユミさんを中心に
たくさんシャッターを切りました。

レンズ越しに気づいたことがあります。
ピースをする人としない人がいることです。

自発的にピースサインを出す人もいれば、
直立不動の人もいます。

写真を撮られ慣れている人もいれば、
カメラの前でどうしてよいのか戸惑っている人もいます。

ああ、この人は写真を撮られた経験が少ないのだなと
思う人もいれば、
様々なポージングでこちらとの距離を縮めてくる人も
います。

カメラを前にしたとき、正面を見据える人もいれば、
視界に入った動くものに目が行ってしまう人もいます。

カメラにどのように対峙するかで、
その人の人生まで垣間見えてしまうのです。
奥深い写真の世界。

明日はユミさんのゆめ工房最終日。
ゆめ工房で過ごした日々を
一枚でも多く写真に残せますように・・・。






posted by machidayumekoubou at 22:21| * Episord | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月10日

ご縁

 本日、賛助会(ゆめ工房を支える会)の会計監査を実施しました。
2020年度の賛助会員名簿を改めて目で追うと、本当に様々な方々に
ご支援をいただいているゆめ工房であることを実感しました。

元利用者さんのご家族、元利用者さんのご家族の職場の上司、
元職員、元ボランティアさん、利用者さんのご家族の友人、
元運営委員さん、元市役所の職員さん、理事長の親戚、
元町会長さん、職員の義姉の職場のボス、職員の友人、地域の方、
イベントで知り合ったお客さん、など、多岐にわたる方々が
支えてくださっています。

新年度が始まり、賛助会員の更新をお願いしたところ、
毎日、更新の通知が届いています。
このコロナ渦にもかかわらず、
変わらぬご厚意を寄せてくださる皆さんには感謝の想いでいっぱいです。

それにしても、です。
毎年毎年、更新をし続けてくださる方々は
私たちにどのような期待を寄せてくださっているのでしょうか?
10年、20年と欠かさず会費を振り込んでくださる方々。
クレジット決済のない、郵便振り込みという手間のかかる振り込み方法にも
かかわらず、郵便局まで足を運んでくださる、方々。

ゆめ工房はそんな方々に支えられ活動を続けてこられました。

コロナで直接お会いすることがかないませんが、
いつかお会いできた時には、応援してくださる理由をお聞きしたいものです。





posted by machidayumekoubou at 00:06| * Episord | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする